応用数学 繁田研究室
直接見えないものを透視する数学
ご挨拶
ある事柄に対する知識があっても、そのことを理解しているとは限りません。例えば、分数の加算を計算できても、分母を通分して分子同士を加算する理由を説明できなければ、分数の加算を理解しているとはいえません。数学を学ぶ際、計算ができるだけでなく、数式から読み取れる意味を理解することが大切です。正しく書くことが正しく理解し、論理的思考力を養うことに繋がります。自分の抱いた素朴な疑問を蔑ろにせず大切にしましょう。問題意識は学ぶことにおいて必要な要素です。
研究概要
偏微分方程式の数値計算――現象の数値シミュレーション
原因から結果を求める数値シミュレーション
物理現象や工学的問題の多くは偏微分方程式と呼ばれる、微分を用いた方程式として記述されます。この方程式を解くということは、未知の関数を求めるということです。ここでの関数は、例えば3次元空間内の点(x、y、z)と時間tにおける物理量を表しますので、4変数の関数になります。このように現象を数学の言葉で記述することを現象の数理モデル化といいます。
自動車を設計する際、自動車の強度を解析する必要があります。自動車の複雑な形状が解析対象の領域で、強度を表す物理量が未知の関数になります。このような問題の解である関数を具体的に表現する(解析解を数学的に構成する)ことは困難ですので、コンピュータの使用を前提とした偏微分方程式の近似解法(数値解法)が必要不可欠となります。また、得られた近似解(数値解)をコンピュータの画面上に可視化することで現象の理解がより容易になります。こうした偏微分方程式の近似解法の提案、及び実際に近似計算(数値計算)して近似解法の妥当性?有用性を検証する数値実験が本研究室の主な研究範囲です。
結果から原因を求める数値シミュレーション
医療現場で活躍しているX線CTは、コンピュータで人体の断層映像を再構成する装置です。断層映像は濃淡により画像化されます。濃淡は2次元平面上の点(x,y)における数値で表現されるので、2変数の関数です。全方位から照射されたX線は人体を透過することで減衰します。その減衰量に基づき、微分積分を用いて断層映像を表す2変数関数(濃淡)を求めます。これがCTの数学的原理の概略です。最終的にはコンピュータで計算できるように、「解の存在しない連立1次方程式」を解くという一見奇妙な操作がなされます。このように、観測可能なデータ(X線の減衰量)から、観測不可能な対象(人体内部)を求めることは逆問題と呼ばれています。既知の原因から未知の結果を求める問題(順問題という)に対して、既知の結果から未知の原因、もしくは既知の原因?結果から未知の法則を求める問題が逆問題です。
既に決まった自動車の形があって、そこから強度を求めることを順問題とするならば、所望の強度が得られる最適な自動車の形を求めることは逆問題になります。逆問題は観測されたデータに含まれる極微小な誤差が解に敏感に影響を与えるので、逆問題を解く際には信頼し得る解を求めるための工夫が必要となります。
本研究室では、偏微分方程式で記述される逆問題をコンピュータで解くための手法を研究しています。
教員紹介
繁田 岳美 教授 / 学位:博士(理学)
- 研究分野:偏微分方程式の数値計算
- 担当科目:微分積分学(1年前期)
情報科学実習(1年前期)
線形代数(1年後期)
薬学リテラシー(1年後期)
総合薬学研究(4~6年)
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