薬品物理化学研究室

研究室のサイトへ

分子イメージングを通して医療に貢献

ご挨拶

治療を行う上で、「病気の原因は何で、体のどこにあるのか」という情報は、とても重要です。こうした情報を、体の中の分子の動きを捉えることによって、ひと目で分かるように可視化する「分子イメージング」という技術があります。がんの診断などに用いられるPETは、その一つです。

分子イメージングでは、「分子プローブ」とよばれる化合物を患者さんに投与し、そのシグナルを検出して画像を得ます。たとえば、アルツハイマー病になると、脳の血流や酸素消費量など生体内の環境が健康な状態とは変わってきます。分子プローブは、そうした代謝や生理機能の変化や異常をとらえる医薬品ということができます。疾病による生体の機能的な変化は、形状の変化よりも早くおこるため、分子イメージングは、早期診断?早期治療にも役立つと考えられています。

当研究室では、このような分子イメージングで用いられる分子プローブを開発したり、分子イメージグ技術を利用して疾患のメカニズムを解明することを通して、医療に貢献することを目指しています。

研究概要

分子プローブの開発と分子イメージングによる疾患のメカニズムの解明

抗がん剤の効果を予測できる分子プローブをつくる

同じ薬を使っても、その効果は人によって違います。薬の効果の有無を、患者さん一人一人について実際に使用し始める前に確認することができれば、患者さんの身体的、経済的負担を大きく軽減することができます。そこで当研究室では、抗がん剤の治療効果の予測を可能とする分子プローブの開発に取り組んでいます。

あるタイプの抗がん剤は、チミジンホスホリラーゼという酵素が高い密度で存在するがんで効くことが知られています。したがって、がんに存在するチミジンホスホリラーゼの量を知ることができれば、その抗がん剤の治療効果を予測できると考えられます。これまでに当研究室では、他の研究機関との共同研究から、チミジンホスホリラーゼを画像化する分子プローブの開発に成功していて、この分子プローブが臨床の場で抗がん剤の効果予測に役立てられることが期待されています。

 今後も、抗がん剤の効果を評価できるような新しいタイプの分子プローブの開発を目指して、研究を進めていきます。

分子プローブの体内での動きを制御する

分子イメージングを利用した診断では、分子プローブが疾患に関する生体内環境や生体物質だけに集まれば、非常に正確で精度の高い情報を得ることができます。しかし、体には異物の除去に関わる臓器(例えば、肝臓や腎臓など)があり、そのような疾患とは関係のない正常な臓器に分子プローブが集まってしまい、診断精度が低下してしまうことがあります。したがって、異物の除去に関わる臓器に捉えられずに、疾患に関するところにだけ集まるように、分子プローブの体内での動きを制御することが重要になります。
これまでに当研究室では、他の研究機関との共同研究から、疾患とは関係のない正常な腎臓にも集まってしまう分子プローブに対して、その構造を修飾し、腎臓への集積を大きく低減することに成功しています。今後も引き続いて研究を行い、より優れた分子プローブの制御を目指します。

神経疾患のメカニズムを解明する

当研究室では、分子イメージングの技術を利用して、疾患のメカニズムを明らかにすることにも取り組んでいます。アルツハイマー病やパーキンソン病といった疾患では、脳の中に異常物質が蓄積することや、神経伝達に障害が生じることが知られていますが、そのメカニズムには明らかとなっていない点が多くあります。どのような異常が起こると疾患が発症するのか、症状が悪化するのかということを明らかにするには、この異常物質の量的な変化や、神経の機能を評価することが重要となりますが、さまざまな分子プローブを用いて分子イメージングを行えば、それらのことを可視化して調べることができます。当研究室では、神経疾患のメカニズムを解明し、効果的な診断や治療のターゲットを見出すことを目指して、特に神経炎症と神経疾患の関係に注目した分子イメージング研究を実施しています。

教員紹介

秋澤 宏行 教授 / 学位:博士(薬学)

  • 研究分野:放射薬品化学、分子イメージング
  • 担当科目:放射化学 (2年前期)
    物理化学Ⅰ (2年前期)
    物理化学Ⅱ (2年後期)
    物理化学Ⅲ (2年後期)
    物理化学実習 (2年前期)
    基礎薬学総合演習(5年)
    最終総合演習 (6年後期)
    物理化学特論及び演習(修士)
    医薬品?生体分子分析学特論及び演習 (博士)
    先端薬学(生命科学と疾患)特論 (博士)

毎日の積み重ねが大切です。毎日の授業、実習を大切にしてください。
努力しなくても月日が経てばいつの間にかできるようになるなんてことはありません。誰かがどうにかしてくれるなんてこともありません。
自分自身がどれだけ努力したかで将来が決まります。
地道に努力する人はかっこいいし、美しい。かっこよく、美しい人になってください。

詳細を見る

宿里 充穗 講師 / 学位:博士(保健学)

  • 研究分野:放射性医薬品学、分子イメージング
  • 担当科目:放射化学(2 年前期)
    物理化学実習(2 年前期)
    医薬品?生体分子分析学特論及び演習(博士)

 

詳細を見る

尾江 悟 助教 / 学位:博士(薬科学)

  • 研究分野:放射薬品化学、分子イメージング
  • 担当科目:物理化学実習 (2年前期)
    物理化学III (2年後期)

 

詳細を見る

もっと詳しく

研究室のサイトへ