10.13(FRI)2023
原著論文発表
【薬品分析化学研究室】 ペプチド固相合成における定量的非破壊アミン検出法の開発に成功(Analytical Chemistry誌に掲載)
薬品分析化学研究室における研究「Quantitative and Nondestructive Colorimetric Amine Detection Method for the Solid-Phase Peptide Synthesis as an Alternative to the Kaiser Test」が、アメリカ化学会(ACS)の学術雑誌Analytical Chemistryにオンライン掲載されました(2023年10月13日)
近年中分子医薬として注目されているペプチドは、不溶性の樹脂上でアミノ酸を連結させるペプチド固相合成法により合成されます。ペプチド固相合成法では反応の追跡のためにアミン検出法が用いられ、ニンヒドリン反応を利用したカイザーテストなどがよく知られています。しかし、カイザーテストを含む既存のペプチド固相合成用アミン検出法は簡便性や試薬の毒性など様々な問題点が知られていました。特に、樹脂を反応容器から取り出すことなく定量的にアミン検出する手法はこれまで開発例はありませんでした。今回、薬品分析化学研究室の梅野智大特任助教と唐澤悟教授らは、古典的な反応として知られる酸塩基反応に着目したペプチド固相合成用の定量的非破壊アミン検出法の開発に成功しました。開発したアミン検出試薬は塩酸塩の状態となっており溶液中で無色ですが、樹脂上のアミンと酸塩基反応を起こし、塩酸塩が脱塩されることで溶液が黄色に着色し、その色の変化からアミンを検出することが可能でした。この着色は樹脂上のアミンの量と高い相関を示し、定量検出が可能であることも示されました。加えて、アミン検出後の樹脂は塩酸塩となるだけであり、そのまま次の反応に用いることができるため、樹脂の分取が不要な簡便なアミン検出が達成されました。本法はペプチド合成の立場からペプチド創薬の発展に寄与することが期待されます。