ブログ
2020年
04.13(MON)2020
第105回国家試験 問60
正解:5
解説:まず、切迫早産、これが何を意味しているか?大丈夫でしょうか?ここは、日本産科婦人科学会のページを見てみましょう
(http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=5)
つまり、子宮の中の赤ちゃんの発達がまだ十分でない時期に子宮が収縮し始め、赤ちゃんを押し出そうとしている状況です。当然、赤ちゃんが子宮内に留まってくれて、しっかり発育してくれるに越したことはないわけですから、治療としては、入院?安静を保ち、薬物治療を行うとすれば、子宮の収縮を抑える薬物が使われます。
1.オキシトシンは、okytokos(早い(okys)出 産(tokos))というギリシャ語に由来する通り、分娩時に下垂体後葉から分泌され、子宮平滑筋に発現しているオキシトシン受容体(Gq 共役受容体)に働きかけ平滑筋を収縮させることで分娩を促進します。
(http://www.yamaguchi-endocrine.org/pdf/ueta201508.pdf)
2.クロミフェンは、排卵誘発剤として使われる薬物です。「内因性エストロゲンのレベルが保たれている無排卵症婦人に投与すると、間脳に作用して内因性エストロゲンと競合的に受容体と結合し、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)を分泌させる。その結果、下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)が分泌され、卵巣を刺激して排卵が誘発される」、と添付文書等にはその作用機序が記載されていますね。
3.クロルマジノンは、ステロイド性のアンドロゲン受容体拮抗薬で、前立腺癌に使われる薬剤です。
4.メチルエルゴメトリンは、強力な子宮収縮作用を有する薬物で(5-HT2Aに作用するらしい)、胎盤娩出後、子宮復古不全、流産、人工妊娠中絶などの際、子宮からの出血の予防?治療に用いられる。
5.リトドリン塩酸塩はβ2アゴニストで、子宮平滑筋の収縮を抑制します。
というわけで、おそらく、選択肢「1」や「4」はいわゆる禁忌肢だったのではないでしょうか?
04.13(MON)2020
COVID-19で、重症化する場合としない場合とでは、何が違うのか?
まだまだ、COVID-19の猛威は続いています。
高齢者で圧倒的に死亡率が高いのは間違いないですが、高齢者なら全員が重症化して命を落とすというわけではなく、100歳を超える方でも無事回復されている方もいます。重症化する人、そうでない人の違いな何なのでしょうか?
もちろん、ウイルスの暴露量とか、SARS-CoV-2の亜型の問題とかもあると思われますが、最近、報告された論文では、IP-10、MCP-3、IL-1raという3つのサイトカインが、重症例では猛烈に上昇している、と報告されています。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.02.20029975v1
04.09(THU)2020
染色体相互転座
非常事態宣言が出されて、皆さん、おとなしくしていますか??私は、一応、すごくおとなしくしています。
さて、よりによってなぜ9番染色体と22番染色体との間で相互転座が起きるのか?ということでした。色々調べたのですが、結局のところまだ詳細は分かっていない、ということになります。フィラデルフィア染色体が最初に報告されたのが1960年(https://academic.oup.com/jnci/article-abstract/25/1/85/983122)、以来60年、白血病細胞の染色体を調べて、既に生じているフィラデルフィア染色体を観察した例は無数にあるが、フィラデルフィア染色体の実際に生成される過程がライブで観察されたことは、私の知る限り、未だない、というのがその大きな理由でしょう。誰かチャレンジしてみませんか?
勿論、わかっていることも沢山あります。染色体の相互転座が生じる時、多くの場合、DNAの二本鎖切断(=Double Strand Break, DSB)が先行しているのですが、DSBは、細胞がストレスにさらされた時ばかりでなく(X-線、抗がん剤)、生理的状況でも(転写、複製時)、にも生じています。ですので、転写が活発なゲノム領域にDSB、相互転座が生じやすいと言われています。また、DSBを修復するプロセスとして、homologous recombination(HR)や、non-homologous end joining(NHEJ)があるのですが、これらがうまく機能しない場合も、DSBが持続し、相互転座が生じやすくなります。また、相互転座が生じるペアリングは(フィラデルフィア染色体なら、9番と22番)、細胞周期の間期(G1/S)に、転座が起きる双方の染色体が核内で物理的に非常に近い距離にいることが重要です。そして、この染色体の位置は、やはり転写活性や、細胞周期、組織?細胞の種類によってそれぞれ変わってきます。以上、フィラデルフィア染色体は、諸々のことが関わって(大雑把です!)形成されてしまうようです(1-5)。
1)Nikiforova, M. N., Stringer, J. R., Blough, R., Medvedovic, M., Fagin, J. A., and Nikiforov, Y. E. (2000) Proximity of chromosomal loci that participate in radiation-induced rearrangements in human cells. Science290, 138-141
2)Parada, L. A., McQueen, P. G., and Misteli, T. (2004) Tissue-specific spatial organization of genomes. Genome Biol5, R44
3)Mitelman, F., Johansson, B., and Mertens, F. (2007) The impact of translocations and gene fusions on cancer causation. Nat Rev Cancer7, 233-245
4)Roukos, V., and Misteli, T. (2014) The biogenesis of chromosome translocations. Nat Cell Biol16, 293-300
5)Mertens, F., Johansson, B., Fioretos, T., and Mitelman, F. (2015) The emerging complexity of gene fusions in cancer. Nat Rev Cancer15, 371-381
04.05(SUN)2020
第105回国家試験 問59
DOACsの服薬でPIVKA-IIが上昇するか? という質問を投げかけただけで終わっていましたね。どうでしょうか?DOACsは、Direct Oral Anti-Coagulantsで、直接効く経口の抗凝固剤という意味です。何が直接か?というと、これらの薬剤(ダビガトラン、アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバン)は、血液中を流れている活性化したトロンビン(トロンビンの場合)や活性化した第X因子のそれぞれ活性中心に直接結合し(非共有結合)、これら凝固因子の活性を阻害する低分子化合物という意味で「直接」です。つまり、肝細胞内でのGla化には一切関係してないので、DOACsによってPIVKA-IIが産生されるはずはありません。
正解:2
解説:これも説明不要ですよね。フィラデルフィア染色体、つまり、9番染色体と22番染色体との相互転座によって生じた異常染色体が、フィラデルフィア染色体です(https://www.jalsg.jp/leukemia/cause.html、の図1)。慢性骨髄性白血病では、造血幹細胞レベルでこの相互転座が生じ、Bcr-Abl1という融合タンパク質が発現しているのでした。この融合によってAbl1チロシンキナーゼが恒常的に活性化していふために、造血幹細胞が異状に増殖してしまっているのが慢性骨髄性白血病の本態です。なぜよりによって9番染色体と22番染色体との間で相互転座が起きるのでしょうか? これは、私もこれまであまり深く追求したことがなかったので、これを機に調べてみます。
04.03(FRI)2020
第105回国家試験 問58
正解:5
解説:さて、この問題は説明不要ですよね。横紋筋融解症、つまりは横紋筋が傷害を受け壊死した時の特徴的な検査所見は?というと、そりゃこの選択肢の中では横紋筋に沢山含まれているミオグロビンですよ、ということになります。では、横紋筋融解症を引き起こす薬剤はどうですか。スタチン類、エゼチミブ、フィブラート類、プロブコール、コレスチミド等の脂質異常症に用いられる薬剤の他、フルニトラゼパム、リチウム、リスペリドン、ハロペリドールといった精神疾患に用いられる薬剤、更にはアルコール、コカイン、アンフェタミン等のヤバイ系の薬物等色々あります。では、なぜこうした薬物が横紋筋融解を引き起こすのでしょうか?これについては、決定的なことはまだ不明です。最も有名なスタチンの場合でさえ複数のメカニズムが提唱されていて、そのうちの幾つかが重なって発症すると考えられています(https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCRESAHA.118.312782)。例えば、コレステロール合成低下による細胞膜の脆弱化、Ca2+の過負荷によるミトコンドリアの機能低下?傷害等々、本当に多岐にわたるので、正直なところ、みなさんの理解としては、色々あって筋肉細胞やられるのね、で良いかなと思います。
この出題者の意図は、やはり横紋筋融解症をちゃんと知っててほしい、ということです。なぜか?横紋筋融解症は場合によっては命を落とすからです。では、なぜ命を落とすのか?これに関わってくるのがミオグロビンなのです。そもそもミオグロビンがなぜ筋肉に多いかというと、ミオグロビンはヘモグロビン同様、ヘムと結合しているタンパク質です。ヘモグロビンが4量体に対し、ミオグロビンは単量体ですが、ヘムの鉄原子で酸素と結合するのは同じです。ただ、酸素に対する親和性がずいぶん違います。ミオグロビンの方が、ヘモグロビンより、酸素に対する結合親和性はずいぶん高い(https://themedicalbiochemistrypage.org/hemoglobin-myoglobin.php)。この図(左記websiteの酸素解離曲線の図です。Mbがミオグロビン、Hbがヘモグロビンです)から分かるように、ミオグロビンは抹消組織(筋肉もその一つ)のような酸素濃度が低い環境でも、ずっと酸素と結合していられるのです。つまり、ミオグロビンは筋肉内の酸素貯蔵タンパク質として機能しているわけです。実際、カリフォルニアのアザラシ君などの潜水が得意な動物は、我々の10倍ものミオグロビンが筋肉にあるとも言われ、ここから筋肉に(正確に言うと、同じ筋肉細胞内にあるミトコンドリアに)酸素を供給しているのです。
横紋筋融解症で命を落とすのはミオグロビンが関わっているという話に戻します。横紋筋融解が生じ、血中に放出されたミオグロビンは腎臓に流れ込みます。ミオグロビンの分子量は17.8kDaなので、糸球体では濾過され、尿細管に出てきて濃縮されます。そこで、他のタンパク質と結合し、尿細管を詰まらせたり、エンドサイトーシスによって尿細管細胞に取り込まれたミオグロビンヘム中の鉄原子が酸化を受け、Fe2+ + H2O2→Fe3+ + OH-+ •OH と、非常に反応性の高いヒドロキシラジカルを産生し、尿細管細胞の構成分子を攻撃したりするのです。その結果、急性腎障害、場合によっては腎不全を引き起こし、命を落とす場合もあるのです。これが、この問題の出題意図です、多分。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmra0801327
04.01(WED)2020
第105回国家試験 問57
正解:5
解説:ここ数年、病態?治療の必須問題では、必ずと言っていいほど腫瘍マーカーが出されていますので、代表的な腫瘍マーカーは覚えておきましょう。この問題に出ているもののほか、α-fetoprotein(AFP)、CA15-3、CA19-9、CA125、SSCはおさえておきましょう。ここでも「看護roo!」さんのページが良いですね?。知っておくべき腫瘍マーカーとその対応する癌種について、実臨床の場面での有用性に基づいて厳選されています!(https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2868)。
さて、NSEです。フルネームはneuron specific enolaseですが、neuron(神経細胞)に惑わされてはいけません。確かに、小児の神経芽腫(https://ganjoho.jp/child/cancer/neuroblastoma/index.html)や褐色細胞腫(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/31/3/31_175/_pdf/-char/ja)など、神経(様)組織由来の腫瘍で高値を示す腫瘍マーカーですが、小細胞肺がんでも高率に高値を示します。なぜか?組織学的に小細胞肺がんは、褐色細胞腫と同様、神経内分泌腫瘍に分類され、細胞質に分泌顆粒を持つのが特徴です。そうです!分泌顆粒を持つということは、何かしら分泌する可能性があるということです! 実際、小細胞肺がんは、様々なホルモンを異所性産生(本来とは異なった場所から産生される、という意味)する癌として有名で、こうした異所性産生されたホルモン等による症状を、「腫瘍随伴症候群(https://ja.wikipedia.org/wiki/腫瘍随伴症候群)Wikipediaも悪くない!」と言います。また、小細胞肺がんがACTHを分泌すると、異所性ACTH分泌によるCushing症候群を発症します。
もう一つこの問題で触れおきたいのは、PIVKA-II です。このフルネームに注目です。Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist-II、つまり、ビタミンKの欠如、あるいはビタミンKアンタゴニスト(要するにワルファリンのことです)によって出来てくるタンパク質、という意味です。果たしてこの本体は何か?実は、PIVKA-IIは別名des-gamma carboxy prothrombin(DCP)とも呼ばれており、「γ-カルボキシレーションをちゃんと受けなかったプロトロンビン」のことなのです。γ-カルボキシレーション(Gla化)、私が講義でさんざん話しをしているのを覚えてますか?これは、翻訳後修飾後反応の一つでしたね(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/28/3/28_2017_JJTH_28_3_353-368/_pdf)。プロトロンビンの場合、肝細胞内でGla化が起きますが、プロトロンビンのN末領域には10個のグルタミン酸残基があり、この10個全てGla化されて初めてCa2+と結合できるようになり、凝固活性を持つのです。癌化した肝細胞では、どういうわけかこのGla化反応が低下しているために(Gla化の実働酵素であるγ-グルタミルカルボキシラーゼの発現量は保たれているらしい)、10個のGla化が完全に起きていないDCP(=PIVKA-II)が上昇します。そして、ここまででお分かりの通り、ワルファリンを服薬していてもPIVKA-IIは上昇します。では、最後に質問です。最近、よく使われる抗凝固剤、DOACsの服薬でPIVKA-IIは上昇するでしょうか?
03.30(MON)2020
第105回国家試験 問56
さて、ここから病態?治療の問題です。
正解:4
解説:そういえば、問29の解説では、WEBページの参照がなかったですね?。それにやたら長くなってしまったし。。。できるだけ簡潔に行きます。
問題はショックについてです。「疾患と治療I」の講義でもお話ししていますし、慶応大学病院のページにもありますが(http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000060.html)、めっちゃ憧れていた先輩と、この間初めて接近して話す機会があったんだけど、鼻毛が両方の鼻からドドォーと飛び出していて、超ショック!!!、のショックとは違います。急激に全身の組織で血液灌流低下を来たし、組織は低酸素となり代謝が障害されている状態です。放置すると多臓器不全で死に至る極めて危険な状態です。原因は様々ですが、ショックの5P症状は、有名です。Pallor(顔面蒼白)、Prostration(虚脱)、Perspiration(冷汗)、Pulmonary insufficiency(呼吸不全)、Pulselessness(脈拍微弱?触知不能)
では、他の選択肢は、医学用語で何と呼ばれている状態(症候)でしょうか?
1 一過性の意識消失:これは「失神」です。血管迷走神経反射(採血した後などに、パタンと倒れてしまう場合)が原因としては最も多いです。一過性、つまり短時間で意識が元に戻るのが特徴です。血管迷走神経反射でしたら、倒れた途端に意識が戻ることが殆どです。
2 組織間液の増加による臓器不全:うーむ、組織間液の増加が「浮腫」で、それが酷い場合は臓器不全をも来します。
3 酸素欠乏による血中の還元ヘモグロビン上昇:これは「チアノーゼ」ですね。還元ヘモグロビン(=酸素と結合していないヘモグロビン)濃度が、5g/dL以上になると出現します。酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンのちょっとした構造の違いによって(https://www.youtube.com/watch?v=CK5nuZIZEDk)、吸収スペクトルが変化するため、チアノーゼでは、唇?皮膚が紫っぽい色いなります。
5 心拍の乱れによる不快感:うーむ、心拍の乱れは「不整脈」で、不整脈が頻脈の場合は確かに不快で「動悸」として表現されるでしょう。徐脈がひどい場合は失神を来すことがあります。
03.29(SUN)2020
第105回国家試験 問29
正解:2
解説:ここで問われているのは、自律神経節(交感神経なのか副交感神経なのかは不明、というかどちらでも同じ)、つまりは節前神経と節後神経との間のシナプスでの神経伝達についてです。そもそも、グラフ縦軸の「節後神経膜電位」はどうやって記録されたのかをちゃんと理解しましょう。
グラフ中に「節前神経の刺激」とありますが、これに引き続いて節後神経膜電位が継時的に色々変化していますね。具体的に何をやったのでしょうか?下図のように節前神経の軸索に置かれた刺激電極(図中A)から電気刺激を加え、無理やり節前神経軸索に活動電位を発生させたのです。ただ、この節前神経軸索で発生した活動電位はグラフ中では記録されていません。何故なら、下図のように記録電極(図中B)は節後神経に置かれていて、節後神経の膜電位変化しか捉えられないからです。それがグラフのタテ軸「節後神経膜電位」の意味するところです。
で、「節前神経の刺激」によって節後神経の膜電位が上昇しています。この問題で問われている「速い興奮性シナプス後電位」の部分です。ここで思い起こしていただきたいのが、自律神経の節前神経−節後神経間の伝達のメカニズムです。節前神経軸索に活動電位を無理やり起こし、その活動電位が軸索末端まで伝達し、そこで神経伝達物質が放出されますが、自律神経の節前神経軸索末端からは、交感神経?副交感神経いずれもアセチルコリンが放出されましたよね。そして、この節前神経−節後神経間の伝達は、通常の神経間の化学シナプス同様、速い伝達が要求されます。ですので、節後神経のアセチルコリンの受容体は、イオンの流れ(=電流)を利用した速い伝達が可能なチャネル型受容体、すなわち、ニコチン性アセチルコリン受容体でないと困るわけです。「速い興奮性シナプス後電位」は、節後神経のニコチン性アセチルコリン受容体にアセチルコリンが結合することでチャネルが開き、Na+を通したために、「速くて(=アセチルコリンが結合したという情報を電流に変換したから)」、「興奮性の(=Na+を流入させるので、膜電位を上昇させ、活動電位を発生させやすくするから)」膜電位変化として観察されたというわけです。
グラフ中では、この「速い興奮性シナプス後電位」に続いて「活動電位」が発生しています。この活動電位は、「速い興奮性シナプス後電位」、すなわち、ニコチン性アセチルコリン受容体がNa+を流入させて上昇した膜電位が、膜電位依存性Na+チャネルの域値(グラフ中、「速い興奮性シナプス後電位」から「活動電位」が生じている“変曲点”に相当する膜電位)に達したため、このチャネルが開き、Na+イオンを沢山通すことで鋭く膜電位が上昇する上昇相と、素早く膜電位依存性Na+チャネルが閉じると同時に、膜電位依存性K+チャネルが開いたため、K+が細胞外に流出することで急激に膜電位が下降する下降相によって形成されています。
このように、チャネルには、同じNa+チャネルでもアセチルコリンのようなligandによって開くニコチン性アセチルコリン受容体のようなチャネルもあれば、膜電位依存性Na+チャネルのように膜電位変化に反応して開くチャネルもあり、興奮性のシナプス伝達では、両者のチャネルが連続して開くことで、活動電位の伝播がなされているのです。
03.28(SAT)2020
第105回国家試験 問11
正解:4
解説:「腎盂」はどこか?という問題です。そもそもこれ読めますか?「じんう」です。「盂(う)」という漢字、「腎盂」以外では「盂蘭盆(うらぼん)」位にしか使われているのを見たことがありませんが、飲食物を入れる口の広い器を意味するようです。では、出題者は、なぜ腎盂を問うたのでしょうか?これは腎盂腎炎を知っておいて欲しいからです。尿路感染症はとても“日常的”です。実際、あなた方の中にも尿路感染症に罹ったことがある人もいると思います。特に、下部尿路感染症の「膀胱炎」、上部尿路感染症の「腎盂腎炎」は、皆さん絶対に知っておかなければなりません。なぜ尿路感染症になるのか? 症状はどんな症状なのか? どんな治療をするのか? 膀胱炎と腎盂腎炎との症状の違いも含めて藤田医科大学のページで勉強しておいてください(http://info.fujita-hu.ac.jp/~urology/explain04.html)。
1は(腎)髄質、2は(腎)被膜、5は(腎)皮質ですが、3は何ですかね?私も知りません。こんなの知らなくて結構です。おそらく、選択肢を5つ作らねばならず、適当に線をつけたものと思われます。私もよくやる手です。また、皮質、髄質については、表面に近い部分は、大脳でも副腎でも「皮質」だし、芯に近い部分は「髄質」です。ただ、知っておいて欲しいのは、ネフロン(ネフロンわかりますか?)が、皮質、髄質に対してどのように配置されているかです。看護roo!(カンゴルー!)のページが抜群に良いですね!(https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1677)この図1にあるように、ネフロンの糸球体は皮質に、尿細管、特にループの部分は髄質に配置されているのです。この図から分かるように、集合管から滴り落ちてきた尿を集める器にあたる部分が「腎盂」で、ここで集められた尿は尿管を通って膀胱に蓄えられるわけですな。
03.28(SAT)2020
突然ですが、
国家試験問題の解説をすることにしました。完全に気まぐれです。
理解が深められるよう、信頼できるWEB siteを紹介するようにしています。問題を解いて勉強する、というのは確かに自分の知識を確認する上では良い方法ですし、国家試験の傾向、期末試験で各先生の“嗜好”を理解するのにも有効です。でも、解いてみて「正解した、やったぜ!」で終わらせてはいけません。必ず「これ何だったっけ?」があるはずです。それを自分なりに納得するまで、色々と調べてください。はっきりと申し上げます。問題を解いて力が着くかどうかは、もっと言えば、勉強したことが身になるかどうかは、「どれだけ深く追求したか」で決まります。これに尽きます。ですので、是非、WEB siteも訪ねてみてください。
ただ、余分な“解説”も多いです。例えば、出題者の意図を深読み(=自分勝手に解釈)したりしています。私は、立ち位置的には国家試験出題者に近い立場なので、出題者の気持ち?メッセージを代弁することで、あなた方に勉強するポイントを伝えたい、という超親切心なのです!まあ、自分勝手な解釈なので、代弁になっている保証は全くありませんし、真面目に解説するだけだと、私自身が嫌になってくるというのが本当の理由ですが。。。
ともあれ、“深読みは”ともかく、あなた方も、是非、“余分なことを”積極的にするようにして下さい。何事においても、もうひと手間かけるかどうかが結構大切なんですよ。
03.27(FRI)2020
03.24(TUE)2020
おめでとう!
薬物治療学研究室の皆さん、
国家試験合格、本当におめでとうございました。皆さんの努力はもちろんのこと、本研究室で大切にしている、何故なのか?、本当なのか?、どうしたら良いのか? そうした”批判的精神”を皆さんがしっかり吸収してくれた賜物だと、勝手に思っております!
ただ、これからがスタートです。今年は特に、誰もが経験したことのないようなCOVID-19が吹き荒れる嵐の中での船出です。こんな時こそ、皆さんのしっかりした判断?行動が患者さんを救うことになると思いますので、臆することなく、頑張ってください。
Good Luck!
03.11(WED)2020
星先生、ありがとうございました。
9年前のこの日、私は初めて星恵子先生にお会いし、大学での講義のこと研究室のことについてご指導いただきました。それから本日まで、星先生には「薬物治療特論」の客員教授として長らくご講義を賜りました。
本日はその最終講義だったのですが、世の中はCOVD-19が蔓延しており、よりによって最後の最後に”無観客”講義をしていただかなければならなくなりました。星先生には、こんな講義は生まれて初めてで良い記念になる、と仰っていただきましたが、なんとも申し訳ない限り。
そんな中、最新の知見をふんだんに取り込まれた講義をしていただきました。本当にありがとうございました。
03.05(THU)2020
02.29(SAT)2020
SARS-CoV-2
今般のCOVID-19の原因ウイルス、SARS-CoV-2は、angiotensin converting enzyme 2(ACE2)を標的(細胞膜に接着する際の受容体)とし、これに結合するには、ウイルスのspike glycoprotein(S protein)が、TMPRRS2というserine proteaseによってprimingを受けることが必要らしい。こうした細胞への侵入メカニズムは、2003年にSARS pandemicを惹き起こしたSARS-CoVと同様である。
そもそも、SARS-CoVが細胞膜上のACE2を標的にしていることを知らなかったし、2012年に騒ぎになった別のコロナウイルス、MERS-CoVの場合はdipeptidyl peptidase 4(DPP4)を標的にしていたとは。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30251-8/fulltext
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe2001126
https://www.cell.com/pb-assets/journals/research/cell/Cell_S0092-8674(20)30262-2.pdf
https://jvi.asm.org/content/93/6/e01815-18
02.29(SAT)2020
01.03(FRI)2020