研究概要(環境応答型分子)last update : 2016.07.07
環境応答による動的機能制御を指向した新規芳香族アミドの創製
有機分子の三次元立体構造は生理活性など機能を発揮するための基本要素であるものの、構造式から立体的な構造を予測することは実は容易ではない。当研究室では分子の立体構造を予測し、自在に制御することによる分子の機能制御を目的としている。
ベンズアニリドに代表される芳香族アミドは立体的に有利なtrans型の構造を有する。しかしアミド窒素をメチル化したN-メチルベンズアニリドはcis型の立体構造をとる。このアミド骨格を分子内に持つ薬はN-メチル化という構造変換によって大きく活性を変えた。このユニークな挙動を示す芳香族アミド化合物を題材として立体構造変換の研究を展開し、環境変化に起因して生じる立体構造制御に関して研究成果をあげている。
多くの機能性分子や超分子に含まれるピリジン環は、酸や金属に対して配位する能力を有する。ピリジン環を導入することで、ピコリン酸アミド型の含ピリジルアミドを構造単位として有する一連のN-メチルアミド化合物をデザインした。これらの化合物群の立体構造を詳細に検討したところ、酸や溶媒の変化によって構造を変換するものがある、ということを見いだした。また多段型のオリゴマーになると、段階的な酸の添加や酸度の調節によって、構造を段階的にかつダイナミックに変換させることもできる。
一方で芳香族アミドの立体化学を決定する要因の一つが芳香環の電子状態である。N,N-ジアリール型の芳香族アミドをデザインし、その芳香環の電子状態を外部からの刺激によって変化させることで、立体構造変換を生じさせる環境応答型スイッチの開発に成功した。
これらは一般的に考案されている分子スイッチとは異なっており、平衡の状態を変えるものであるが、前述のように生体内ではこのような分子が機能をスイッチすることができる。