お知らせ?トピックス
お知らせ?トピックス
04.20(SUN)2025
Dual-FRET法およびX線結晶構造解析により明らかとなったヒトPPARα/δ/γリガンド結合部位上での各種Coregulatorの競合的結合(Antioxidants誌に掲載)
当研究室における研究「Competitive Ligand-Induced Recruitment of Coactivators to Specific PPARα/δ/γ Ligand-Binding Domains Revealed by Dual-Emission FRET and X-Ray Diffraction of Cocrystals」が、MDPIの学術雑誌Antioxidants誌にオンライン掲載されました(2025年4月20日)
α/δ/γの3サブタイプから構成されるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、内因性脂肪酸または治療薬を感知して脂質?糖代謝および酸化ストレスを制御するリガンド活性化核内受容体/転写因子です。リガンド非結合/不活性状態のPPARは、レチノイドX受容体(RXR)及びCorepressor複合体と多タンパク質複合体を形成し、リガンド結合によりCorepressor複合体がCoactivator複合体に置換され、代謝制御?抗酸化遺伝子を含む様々な遺伝子の転写を開始します。私たちは、Single-emission及びDual-emission蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを用いて、CorepressorがCoactivatorに置換されるプロセス、または2つのCoactivatorがPPARα/δ/γリガンド結合ドメイン(LBD)をめぐって競合するプロセスを検討しました。Single-emission FRET法によって、それぞれのPPARα/δ/γ選択的アゴニストが、2種Corepressorペプチド(NCoR1とNCoR2)のPPARα/δ/γ-LBDからの解離と2種Coactivatorペプチド(CBPとTRAP220)の誘引を惹起することが明らかになった一方で、Dual-emission FRET法によっては、これらのプロセスが同時に起こり、4種Coactivatorペプチド(CBP、TRAP220、PGC1α、SRC1)が、リガンド活性化時に異なる選択性でPPARα/δ/γ-LBDに競合的に誘引されることが実証された。さらに、X線回折を用いて新たに得られた5つの共結晶構造、すなわちPPARα-LBDs–NCoR2/CBP/TRAP220/PGC1α及びPPARγ-LBD–NCoR2を、これまでの研究で得られた構造と併せて解析した結果、これらの共結晶においてCoactivatorはリガンド結合状態ではコンセンサスLXXLLモチーフを介して同じPPARα-LBD部位に結合すること、NCoR1/NCoR2 Corepressorは、リガンド非結合状態ではLXXXIXXXLモチーフ内のIXXXL配列を介して同じ部位に結合すること、そしてリガンド活性化によってAF-2ヘリックス12の形成が誘導されるとCorepressor結合が阻害され、Coactivatorの結合空間が形成されることが明らかになりました。これらのPPARα/γ関連の生化学的及び物理化学的知見は、限られたPPARα/δ/γ-LBD部位におけるCoactivator同士の競合とCoactivatorによるCoactivator置換の動態を明らかにするものと考えています。